摺りが好きです。水性板目木版の、このプロセスを中心に据えて制作しています。どっぷりと依存していると言った方が近いかもしれません。
色面と奥行き、この2つが作品のキモです。色は、木版を摺り重ねてつくります。絵具を調色してから版木に乗せるのではなく、市販の絵具そのままの色を使用します。何版か摺り重ね、和紙のなかで、ばれんを使って混ぜ合わせます。摺り重ねてつくった色は、層を重ね、和紙の質感に助けられ、深い色をつくることができます。
そして、奥行きを画面に効かせます。形の遠近法、色の明彩度差、摺り重ねた回数、ゴマやつぶし、ぼかしなどの木版特有の摺り方によって、色面の平面性や凸版の明解さを少し揺さぶります。これらの要素によって画面のなかの押し引きを組み立てるような感覚で制作しています。